老朽化した動物病院の建て替え及びその資金調達について、相談者のC様・その父親であるB様と面談。
ハウスメーカーから提示されたプランをベースにT家敷地の土地利用計画を検証していくが・・・
建物建設資金の調達当事者は孫のC様となるため、動物病院敷地をT家敷地から
分筆※1することで融資の承認を得られる金融機関を選定。
さらにC様は将来の相続に不安を感じておられたため、当該動物病院の敷地に
ついては、A様からB様へ相続する旨を公正証書遺言として残すこととした。
分筆し動物病院敷地となった土地と新築した動物病院建物を担保提供
(債務者はC様)することで資金調達ができ、金融機関側にとっても
安心材料となった。
※1土地登記簿上,一筆の土地をいくつかに分割すること。 (三省堂 大辞林より)
公正証書遺言の作成が終わった後、A様の不動産について、不動産マネジメントシートにより把握すると同時に相続簡易試算を
行い全体資産及び想定される相続税額(概算)を把握。過去の相続の影響で問題のある不動産があることが発覚したため、
不要不動産(資産番号④)の売却により納税資金を確保する。
賃貸借契約に問題がある貸家(資産番号⑤)を正常化する。
未利用地の土地活用(資産番号①)を検討する。
共有土地(資産番号③)を解消する。
相続対策としての収益不動産購入に向けた不動産情報を収集する。
以上を目的としたコンサルティング契約を締結すると同時に、土地家屋調査士にT家すべての土地を確定測量※1して頂くよう依頼。
※1隣地所有者の立会い及び確認や官公署の図面をもとに土地の境界を全て確定させる測量のこと。
不要不動産について、ご自宅とは離れた場所にあり、生産緑地指定を受けた約150坪程度の土地で、周辺地を開発していた
地元不動産業者様と「宅地造成工事の協定」を締結していたが、T家としては将来使い道のない土地であったことから売却を
提案し、地元業者様に購入のご承認をいただき売買が成立。
契約締結と決済引渡しについて同日実施を目指し準備をするが、
1週間前にA様が体調を崩し、急遽入院されたり(約2か月後無事退院)や契約決済前日になってT家の金庫が開かなくなり
重要書類が持ち出せなくなったり(即日金庫業者を呼び金庫を破壊)、契約当日代理人のB様が行方不明になったりと
契約直前から契約当日にかけて様々なアクシデントに見舞われたが、
約2,000万円の納税資金として確保することができた(平成25年5月)。
問題がある貸家について、過去の相続で取得した土地(約200坪)は、A様が所有、建物(貸家5棟)はB様が所有しており、
賃貸オーナーはB様となっていた。
地元不動産業者の管理の元、賃貸借契約書には「更新はしない」という旨が明記されているにもかかわらず更新が繰り返されていたり、
勝手に建物を増築している入居者がいたり、無断で契約者とは別の入居者がいたりと、契約状態も現地不動産も「荒れ放題」の状況。
管理業者に経緯をヒアリングすると「すべてB様の承認済み」「弊社が管理する前の入居者については対応できません」
という回答であった。
顧問弁護士とも協議するがT家ではとても対応しきれないものと判断し、賃貸借契約の正常化は諦め、
このまま売却することに方針を転換したところ、大手不動産仲介会社の法人部門担当者様の協力もあり幸いにして
買主も見つけることができた(地元ビルダー様)。
売主のT家にとっては相場より安く売ることになったが「瑕疵担保一切免責」にて現金化でき、
買主にとっては「問題不動産」だが相場より安く事業用地が取得できたという、双方にとってプラスのお取引ができ、
T家はこの売買により約3,000万円の納税資金ができた(平成25年8月)。
平成25年末を前に譲渡所得税等翌年の確定申告について準備する中で、ここまで約5,000万円の納税資金が確保できたが、
A様の高齢による体調不安等も考慮し、B様への生前贈与を提案した。
この時点でA様の相続に対する意向は「不動産は長男であるB様に、その他は兄弟姉妹で分けてほしい」という
大雑把なものであったため、この時点で相続税試算を実施、説明。
まだ数年A様がお元気なうちから非課税枠を使って生前贈与することの有効性をご理解いただく。
相続人全員にお集まりいただき、現時点での相続税試算結果及び生前贈与の意向について説明し、
姉妹間で贈与額について協議を願った。
ところが贈与額のご回答を頂戴し、再度皆様にお集まりいただいた際、A様の意向が180度転換し、
一切生前贈与は行わないことに(平成25年12月)。年末より再度A様が体調を崩されたことに起因してB様、D様ご夫婦では
A様の面倒が見切れないため、A様は高齢者介護施設に入院することとなった。
生前贈与の検討と同時に、次善の対策として未利用地の活用について、不要不動産・問題のある貸家の売買が完了したところでご自宅周辺の空き地(資産番号②)の活用について検討を開始する。
相続対策としてのA様名義の負債を作る。
T家の所得対策として安定収益不動産を作る。
この2点に主眼を置き、まず資産場合②についてテナント誘致の可否についてマーケティングを開始。
ハウスメーカーやゼネコンにテナント誘致を依頼したが、難航した。
コンビ二エンスストアはT家の道路向かい側に大手コンビニ出店計画があり×
物販店舗(ドラッグストア)もT家の道路向かい側に既存の大型物販店があるため×
飲食店舗・物販(紳士服等)店舗は道路交通量が少ない等の理由により×
スーパー銭湯の出店意向はあったがT家自宅敷地を含めた土地活用計画となるため×
上記により計画を断念する。
またご自宅周辺の空き地の利用計画について、B様からアパート建設の意向が伝えられ、
ハウスメーカー数社へ計画を打診し賃料相場観の調査を依頼。
最寄駅へ徒歩20分以上、バスも1本/時 も無い不便なエリアのため賃貸需要は期待できない。
上記に伴いサブリース・借上げなど賃貸経営を安定化させる賃貸条件をつけることもできない。
上記のためこちらも断念することに。B様は地元金融機関からアパート経営を勧められていたようだがお断りをし、
不動産情報の収集に活動の主眼を置くこととした。
未利用地の活用と並行して、共有土地の解消について検討を開始。
当該地は周辺地権者と一体となり、工場の駐車場及び作業場として
大手メーカー様へ賃貸しており、単独での売却や他テナント様へ
賃貸することが難しい土地となっていた。
この土地の一部についてA様とB様の共有名義の土地が一筆だけあり、
A様の財産を減らす観点からB様へ売却することを提案する。
周辺地権者と一体で賃貸していることから、T家のみで所有している土地だけでは道路の接道がないことから、
相続評価よりも実勢価格のほうが格段に安く評価されるため、不動産鑑定評価を取ってその鑑定額にて
B様が引き取ることとした(平成26年10月)。
A様の入院が長期化したことにより、不動産の契約行為等について法的整理が
必要と考え、顧問弁護士や司法書士とも相談し「家族信託」を提案した。
A様とB様を委託者及びそれぞれの所有不動産の「受益者」とし、
C様を「受託者」、G様を「信託監督人」とした家族信託※1を立案し、
法的手続きや相続時の想定される問題点を顧問弁護士とともに整理し手続きを
進めることにした。
その間、資産番号②のテナント様から「裏の畑も駐車場としてお借りしたい」という旨の要請もあったため、家族信託の手続きを
進めながら駐車場賃貸条件を調整した。
※1資産を持つ方が、特定の目的(自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を
信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組み(一般社団法人 家族信託普及協会より)
既存駐車場の賃貸条件が周辺相場より安く設定されていたこと、新たに駐車場とする部分については1,000万円を超える
造成工事負担が必要であることを賃借人側にご理解いただき賃貸条件が整ったため、駐車場造成工事を開始。
賃貸借契約締結と同時に造成工事を着手し、工事が完了し賃貸がスタートした時点で家族間の信託契約を締結、
登記手続き等を終えることができた(管理する信託口口座(信託不動産に関する管理専用の銀行口座)の開設のため、施設から
一時外出の許可を頂きA様に金融機関へご同行頂いたが、この時点でご自身による自署が難しい状態になっていた)(平成27年9月)。
平成28年4月にA様が逝去され、相続手続きが開始されたが、
生前に何度も相続の件を親族内で話し合っていたため「争族」になることはなかった。
また、納税に不足する部分については資産番号②をテナント様へそのまま売却することで確保することができ、
遺産分割協議~相続申告~納税までを無事に終えることができた。
今後については、売却により所得が減った分の補完と相続対策を目的に収益不動産を購入するための情報収集に注力中。
資産番号 | 面積 | |
---|---|---|
① | 自宅土地 | 500坪 |
自宅建物 | 160坪 | |
合計 | 660坪 | |
② | O社駐車場(一部畑) | 600坪 |
③ | P社駐車場 | 730坪 |
④ | 造成土地 | 160坪 |
建物 | 90坪 | |
造成工事中 | 250坪 | |
⑤ | 2丁目土地 | 200坪 |
2丁目建物 | 40坪 | |
木造貸家4棟 | 240坪 | |
⑥ | 畑 | 130坪 |
合 計 |
土地 | 2320坪 |
建物 | 290坪 |